長く伸ばした白髪をニット帽で隠したぽんきちが川沿いの喫茶店に入ったのは午前10時前だった。




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いつもより遅くなったので急いで店内のトイレ掃除を始めると、相方は仕込みを終えて煙草を吹かしながら新聞を読んでいる最中だった。

壁に飾っている手作りアクセサリーの値札がひとつだけ外れていることに気付いたぽんきちは、相方にそのことを告げると奥のギターレッスン部屋に入り掃除に取りかかった。



先週まで満開の桜が見えていた東向きの窓からは春の陽が店内に柔らかく降り注いでいた。

ここは手作りアクセサリー販売とギターの個人レッスンをやっている喫茶店で、焙煎コーヒーとちょっとした軽食とスウィーツが美味しいと評判のお店だった。

ギターの個人レッスンはアコースティックギターを専門に教えていて、生徒は25人程度でもっぱらギターを始めて間もない10代の若者から60代のお年寄りまで、幅広い年齢層の人たちが集まっていた。

ギターのレッスンが始まる30分も前に来てコーヒーを飲みながらスマホをスクロールし続ける若者たちや、レッスンが終わった後で「今日はやっとアルペジオが弾けるようになった!さすがに喉が乾いたよ。」と笑いながら相方にコーヒーを注文するお爺ちゃんたちが週に一度だけやって来る。

みんな少しずつギターが上達していくのが楽しいのだ。



中には店内に飾っている手作りアクセサリーに興味を示すお客さんもいて、「これはぽんきち先生がいつもしているネックレスと同じだね。今度ライブで着けたいから一個ちょうだい。」と言って買って帰る少年も時々いたりする。

相方が作るアクセサリーはお店のHPでも写真をたくさんアップしていて、ネットを見て注文してくるお客さんもいる。

ぽんきちやぽんきちユニットの女性ヴォーカルが身に付けたアクセサリーの写真もすべて相方が撮影してアップしている。

ぽんきちユニットのスタイリングも彼女がほとんど担当していて、喫茶店と手作りアクセサリー販売、そしてぽんきちのギターレッスンとのタイアップはお店を始めて一年くらい経った頃からやっと軌道に乗ってきた。

それまではなかなかお客さんが集まらず苦労の連続だったけれど、ドリンクも軽食も手作りアクセサリーもギターレッスンも、どれも妥協せずに美味しいもの、美しいもの、楽しいものを提供し続けたことがやっと実を結んだのだ。



ぽんきちは金曜日から日曜日の週末は相変わらずアコースティック・デュオで毎晩ライブをしている。

サポートギターのユニットも増えて毎週あちこちのライブバーやホテルで演奏していて、すっかり白髪ロン毛のギタリストのイメージが定着してしまった。

相方はというと相変わらずぽんきちのライブで写真撮影に精を出し、自分のブログやお店のHPに写真をアップするのが週末の楽しみになっている。



ぽんきちは喫茶店でライブをするつもりはなかったけれど、若い頃ライブバーを経営するのが夢だった相方のために、毎月第4土曜日の夜だけはお客さんたちを呼んでライブするようになった。

月に一回だけ、ぽんきちのユニットでライブすると、喫茶店の常連さんたちやギターレッスンの生徒さんたちが集まってくれた。

たまにはギャラ無しのライブを自分たちのお店でするのもいいだろうとぽんきちは考えていて、相方がみんなと楽しそうに話しているのを見ているのが好きだった。



あの時、思い切って決断して良かったと、苦労して自分たちのお店を持つまでになった日々のことをぽんきちは思い返していた。

お店の玄関に飾っている黒猫ジジの陶器もすっかり年季が入ってしまったけれど、ぽんきちは今が一番幸せな時なのかもしれないな・・・と白髪ロン毛の頭を掻きながらお店の玄関に置いている灰皿で煙草の火を消した。





 おしまい



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posted by ぽんきち at 2015/03/23 20:43 | Comment(0) | ブログ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする